耳掃除がトリミングに含まれる理由とは?
犬のトリミングにおいて耳掃除は、単なる美容目的ではなく、健康管理や予防医学の観点から非常に重要な工程とされています。犬の耳は人間と異なりL字型の構造をしているため、湿気や汚れが溜まりやすく、そのままにしておくと耳のトラブルを引き起こす原因となります。そのため、トリミングの際に耳掃除を行うことは、単にきれいにするだけでなく、病気の予防と健康維持のために欠かせないケアといえるでしょう。
多くのトリミングサロンでは、経験豊富なトリマーが専用のイヤークリーナーやピンセット、コットンなどを使用して、外耳に付着した耳垢や被毛、汚れを丁寧に取り除いています。以下は、耳掃除が含まれているトリミングの標準的な工程の一例です。
耳掃除の工程例
工程 |
内容 |
使用する道具例 |
1 |
外耳の状態を確認する |
手袋、ライト |
2 |
耳垢や汚れの確認と除去 |
イヤークリーナー、コットン |
3 |
耳毛のカット |
ピンセット、トリミング用バリカン |
4 |
消毒と仕上げ |
消毒液、専用ローション |
このように、プロによる耳掃除は飼い主が自宅で行うには難しい箇所まで丁寧にケアできるというメリットがあります。たとえば、耳の奥の湿気の拭き取りや、過剰な耳毛の処理などは、自宅ではリスクが伴い、犬が動いてしまった際に耳を傷つけてしまう可能性もあります。
さらに、耳掃除の際にトリマーが炎症や赤み、異臭、出血などの異常を発見することもあり、これにより早期の動物病院受診を促すことができ、深刻な病気への進行を防ぐ助けになります。
最近ではセルフトリミングの人気が高まる一方で、「正しい耳掃除の方法がわからない」「掃除中に出血してしまった」といった相談が動物病院やトリミングスクールで増加している傾向にあります。トリミング用品の普及やバリカンの販売が進む中で、正しい知識と技術の習得が追いついていない現状が浮き彫りとなっています。
定期的なトリミングの中で耳掃除を取り入れることは、犬の快適な生活を守ると同時に、飼い主の安心にもつながる重要なケアです。トリマーの技術や使用する道具、対応の丁寧さは、信頼できるサロンを選ぶうえでの指標にもなるため、飼い主の目線でもしっかりと確認しておくべきでしょう。
耳掃除を怠るとどうなる?炎症・臭い・感染症リスク
耳掃除を怠ってしまうと、犬の健康にさまざまな悪影響を及ぼすリスクがあります。犬の耳は見た目では状態が分かりづらく、しかも犬自身が痛みや不快感を言葉で伝えることができないため、トラブルが進行してしまいやすい部位です。以下に耳掃除を怠った場合に発生しやすいトラブルとそのリスクをまとめました。
耳掃除を怠った際の代表的なトラブル
症状名 |
主な症状 |
放置した場合のリスク |
外耳炎 |
耳を頻繁にかく、赤み、悪臭、頭を振る |
中耳炎・内耳炎への進行、激しい痛み |
マラセチア感染症 |
茶色い耳垢、強い臭い、かゆみ |
感染の慢性化、皮膚炎、治療が長期化 |
耳血腫 |
耳をかきすぎて内出血 |
耳の変形、外科的処置が必要になる |
耳ダニ感染症 |
黒い耳垢、大量のかゆみ |
他の犬への感染、強い不快感 |
これらのトラブルは、初期段階では「少し耳が臭う」「耳をよくかいている」といった軽微なサインで現れることが多いですが、見逃してしまうと悪化し、治療が長期化する原因になります。治療には通院の負担や費用も発生し、犬自身もストレスを感じることになります。
また、耳垢が溜まりやすい犬種、特に垂れ耳や耳毛の多い犬は通気性が悪く、湿度がこもることで細菌や真菌が繁殖しやすくなります。トリミングの間隔が空いてしまっていたり、予約が取りにくくて定期的な施術ができていない場合は、耳の中に汚れが蓄積されている可能性が非常に高くなります。
自宅で耳掃除をする場合も、イヤークリーナーや専用のコットンなど、トリミング用品専門店で扱われている正しい道具を使うことが大切です。耳の奥に無理に指や綿棒を入れると、粘膜を傷つけたり、耳垢を奥に押し込んでしまう恐れがあるため注意が必要です。
耳掃除は、外見を整える「美容」のためではなく、病気の予防と健康を守るために行う「必須のケア」として位置付けましょう。特に、出張トリミングサービスを利用する場合は、耳掃除が施術に含まれているか、どのような内容で行われるのかを事前に確認することが大切です。信頼できるサービスを選ぶことで、耳のトラブルを未然に防ぎ、愛犬にとっても飼い主にとっても安心できるケアにつながります。